自損自弁の示談をすることのメリット・デメリットとは?

元担当者のタキノベです。

交通事故の過失割合の交渉をしていると、自損自弁という言葉が出てくることがあります。

一般には聞きなれない言葉ですね。

私も保険業界で働くまでは聞いたこともないフレーズでした。

しかし、この自損自弁は知っておくと便利です。

自損自弁を知っていると過失割合の交渉が非常に有利になるケースがあります。

使い方によってはめちゃめちゃ強力な武器になります。

実際私はこの自損自弁を使って、いくつもの事故の過失割合を有利に交渉してきました。

逆に相手側に自損自弁を使われて、不利な交渉をせざるを得ない状況になったこともあります。

理解してみるとすごく単純なことなので、ぜひ目を通してみてください。

併せて「過失割合ってそもそもなに?誰がどうやって決めるの?」の記事も読んでいただくと分かりやすいと思います。

 




自損自弁の意味とは?

自損自弁とは「お互いに請求しあわずに、自分のものは自分で払いましょう」ということです。

「損害の持ちわかれ」とも言います。

本来であれば過失割合をまず決め、それぞれの損害額を確認します。

そして、過失割合に応じて、損害額をそれぞれがもちます。

具体的な例を挙げて説明します。

AさんとBさんが出合い頭で車同士が接触。

Aさんの修理費用が15万円。

Bさんの修理費用が5万円。

過失割合が40:60とします。

 

本来であれば

AさんがBさんに対して、15万円×40%=6万円を、

BさんがAさんに対して、5万円×60%=3万円を支払います。

これが通常の事故の流れです。

しかし自損自弁は違います。

お互いに支払い合わずに、自分の物は自分で支払いましょう、ということです。

双方の合意があればこういった示談解決が可能なのです。

自損自弁のメリットは?

・過失割合を決めなくてよい

過失割合の交渉において、お互いの主張が強く、平行線になることはしばしばあります。

このままでは解決しない、長引くだけ、そんな状況です。

示談交渉は双方の納得があってはじめて解決となります。

そこで、「お互いもう請求しあわずに、自分の車は自分で直しましょう」

と自損自弁で双方納得できればその時点で解決です。

過失割合を決める必要がなくなるので、解決が早くなることがあります

・保険を使う必要がなくなる

自分の修理費用を相手から請求できなくなる代わりに、

相手の修理費用を払う必要がなくなります。

つまり対物保険を使用する必要がない、ということです。

保険を使った場合、3等級下がり次回の保険料が上がります。

自損自弁で解決した場合、保険料を上がることを避けることが出来るのです。

※自損自弁でも車両保険を使った場合は3等級ダウンとなります。

・過失交渉が有利になる

これこそが自損自弁の一番のメリット・強みです。

過失交渉が圧倒的に有利になるケースがあります。

全てのケースで有利になるわけではありません。

ではどういったケースで有利になるのでしょうか?

それは「自分の方が支払う額が大きい場合」です。

逆のケース:相手の方が支払う額が大きい場合は自損自弁のメリットは少ないので気をつけましょう。

自損自弁を利用した交渉の具体例

少し長くなりますが、単純な計算ですので、じっくり見てみてください。

AさんとBさんの交通事故。

・Aさんは修理費用10万円

・Bさんは修理費用100万円

・Aさんは過失割合を60:40で主張

・Bさんは過失割合を80:20で主張

過失割合の主張がお互い強く、平行線が続いたとします。

そんなとき

Aさん

Aさん
このまま解決しないのであれば自損自弁でもいいですよ

と主張したとします。

するとどうなるでしょうか。

・Aさんの立場

Aさんの主張の過失割合60:40だとしても

Bさんの修理費用100万円×60%=60万円

を本来は支払う必要があります。

ところが、自損自弁となれば自分の修理費用の10万円だけ負担すればよいのです。

Aさんの支払額として50万円も少なくなります

・Bさんの立場

過失割合80:20であれば

Aさんから100万円×80%=80万円を受け取れます。

しかし自損自弁になってしまうと、受け取れる80万円がなくなってしまうのです。

Bさんは、自損自弁になってしまうと圧倒的に不利になります。

それであればAさんの主張の60:40を飲んだ方がマシです。

60:40であれば60万円を受け取ることが出来ますから。

自損自弁を利用すると、このような交渉が出来るのです。

ちょっとずるいですよね(笑)

自損自弁も、Aさん主張の60:40もどっちも了承しなければいいだけでは?

確かにそうなのですが、Bさんの立場からすると一つ落とし穴があります。

平行線になった場合、修理費用はそれぞれが自分で立替することになります。

Aさんは10万円の立替

Bさんは100万円の立替

長期化した場合、Bさんの負担の方が大きいですよね。

Aさんからすると平行線になっても構わないのです。

保険会社同士・もしくは当事者間の話し合いは強制力がありません。

お互い了承しなければいつまでも平行線になってしまうのです。

※車両保険を使えば、修理費用は保険会社が支払います

自損自弁を切り出されたときの唯一の対抗手段

Bさん

Bさん
自損自弁も納得できないが相手の主張も納得できない。

そんなときの打開策はひとつしかありません。

唯一の方法とは裁判です。

裁判であれば、強制的に割合が決めることが出来るので、相手の主張を受け入れる必要がなくなります。

裁判のデメリットは長期化することと勝てるとは限らないことです。

そして弁護士費用特約がなければ、弁護士を雇う費用・裁判費用などが自己負担となってしまいます。

以前の記事「弁護士費用特約のメリットデメリット・弁護士の選び方について

でも書きましたが、弁護士費用特約は費用も安いので入っておくことを強くおススメします。

自損自弁のデメリットとは?

・場合によっては支払額が増える

なんでもかんでも自損自弁を交渉に利用すれば有利になるわけではありません。

先ほどの具体例で説明したBさんの立場だとすると自損自弁はデメリットでしかありません。

また、自損自弁の解決よりも保険を使った方が負担する金額が少ない場合もあります。

自損自弁が有利になるかどうかは、ご自身の担当者に確認しましょう。

・相手が納得しない場合、長期化する可能性がある

自損自弁を主張するときは、ほどんどの場合自分が有利になるからだと思います。

つまり相手にとっては不利な条件、ということです。

そのため相手はすぐに過失割合も自損自弁も了承はしないでしょう。

長期化することは覚悟する必要があります。

また相手が弁護士特約加入している場合は、弁護士を入れてくる場合もあります。

裁判になるとさらに長期化してしまう恐れがあります

でも弁護士が入った=すぐ裁判、ではありません。

弁護士が入って裁判になると面倒なので、その場合は過失を少し譲歩する、などの選択は可能です。

そうすれば裁判を避けることも出来るので安心してください。

まとめ

以上自損自弁についてでした。

使いどころを判断する必要はありますが、自損自弁は時として非常に強力な武器になります

使った方が有利になるか、不利になるか、あなたが考える必要はありません。

保険会社の担当者に自損自弁になるとどうなるのか聞きましょう。

過失を決めて解決した場合と自損自弁で解決をした場合、それぞれ金額的にどう動くのか教えてくれます。

必ずしも過失割合を決めることだけが解決の方法ではありません。

自損自弁を利用すると有利になるケースもある、ということは頭に入れておくとよいかもしれませんね。




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